歴史の香りは静かに去り行く

おてきち

2020年07月23日 13:47

長崎の観光名所である眼鏡橋から歩いてすぐの魚の町という所に
江戸時代から続く老舗【江崎べっ甲店】が、先月までは確かに存在していました
おてきちも何度か行ったことがありますが。。。

建物がとても趣があって、市民の一人として心の中では誇りにも
思っていたくらいに、県民として絶対に自慢できる場所のひとつだったのですが。。。
残念ながら、長崎の街から建物そのモノも移築保存されることなく
無情にも姿を消す結果となったワケですわ


その様子を長崎の某TV局が取材をされていたようで、その番組の放送(TV)から
写真を撮らせて貰い、ここに歴史を書き綴らせて頂きたく候!!

そして番組の中でBGMとして流れていたのが【愛は花、君はその種子】という
これは「ローズ」という映画の主題歌として、ベット・ミドラーが歌って有名になった
ちょっと讃美歌?のような音楽なのですが・・・
それがまた涙を誘うワケですよ
出来ればこのメロディを聴きながら 本日の話は読んで欲しいじょ(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=9Q-MgM4oR4o


店舗は江戸時代に唐通詞の屋敷を、江崎家が買い取ってその後、洋風建築を
取り入れた和洋折衷の店舗へと、1898(明治31)年に改築されました。

その当時、客待ちをする人力車がズラリと表に並んでいたり。。。
外国人の客人も多かったらしく、その中にはロシアの皇太子「ニコライ」も来店され
その証に、サイン入りの写真なども展示されていましたよ
ニコライと言えば、知る人ぞ知る「大津事件」なんていうのもありましたね(笑)
また外国人にも分かるように店の看板には英語、ロシア語、日本語の表記がされていました。


現在9代目である江崎淑夫社長は、べっ甲工芸の材料であるタイマイの輸入禁止や
職人の後継者不足などを熟慮し、余力のある内に閉店を決意した。と話されていました
長崎べっ甲は、2017(平成29)年に国の伝統的工芸品に指定され、これから益々・・・
と思っておられたことでしょうに、何とも悔しい気持ちだったとお察し致します。

長崎市内に残っているべっ甲店は、ここを含めて数軒らしく。。。
中でも江崎べっ甲店は、日本でもっとも歴史が古い創業1709年というからそういった伝統を
持った老舗が消えてゆくという現実を、周囲はどのように感じているのでしょうか!?


そして店内には上野彦馬が撮影した幕末の長崎の風景や、べっ甲に関する資料などと
一緒に、当時の貴重な記録台帳のようなモノも残されています。

それは、この時代キリスト教を禁じるために町人たちに年に一度、正月に踏絵を行っていた
という記録台帳が、かなりの数残っていたみたいですよ
その中には、江崎家の初代当主「江崎清蔵」氏の名前もありました
要するに、踏絵を踏んだ町人の名前や檀家の寺などを記した記録台帳のような
モノだったそうです


番組内でのインタビューでは、長崎郷土史家・越中哲也先生(98歳)が話されていたのですが
万難を排してでも保存する方法に向かう!!
といった方針を長崎市が持つか、持たないか!!ですよ・・・と。

昨年の暮れぐらいから、市との話し合いは持たれていたようで市が土地と建物を買い取るか
それとも建物だけを買い取り移築を考えるか、など・・・
しかし結果は、移築するにも条件に合う移転先が見つからなかったことと
折り合いのつく金額ではなかった・・・という結論に至ったそうです
やはりこの世は全てが夢ではなく、金の世の中なんですカネ


越中先生は正倉院からの依頼で書いたという、べっ甲解説書【玳瑁考】の中で
色々と長崎べっ甲を中心に、江崎べっ甲店の屋敷のルーツについてなども記されていますが
長崎市内では、ついこの間も文化財の指定を解除し解体に至ってしまった料亭【富貴楼】
についても悲しい想いをされたばかりなのに、また今回の案件も同じく文化財指定を
解除せざる得ない結果となり、文化財に長年携わってこられた立場としては
ホントやるせない思いだとお察し致します


店舗の隣には庭園と十畳ほどの和室があるそうで。。。
庭園の方では、7年に1度廻って来る「長崎くんち」の庭見せ時に公開されていました。

かつては「座売り」といって、上客に限りこの座敷へ招いて座売りという形で
商売をされていたそうです
一般の人や外国人客に関しては、隣の洋風建築の店舗の方で販売をしていたらしく
このように和洋2つの店舗が、併存している商店建築が残されているのは
とても珍しいことなので、お金で買えないモノがここにはあるんです!!と
某大学教授だったかな?は、語られていましたけどね


無力な市民はクラウドファンディングをする余地もなく。。。
ただただ「解体やむなし」の風に流されて、消えゆく歴史の建造物を静かに見守ることしか
出来ないワケですな・・・

やさしさを 押し流す 愛 それは川
魂を 切り裂く 愛 それはナイフ
きっと来年の今頃は、江崎べっ甲店の跡地にはマンションかな?が、建設中で。。。
その場所に立ちながら【おもひでぽろぽろ】なんだろなぁ・・・




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